理学療法士が行うADL訓練

ADL訓練とは、”Activities of daily living”の頭文字をとった略称で、人が生活するために必要な動作の訓練を意味します。

理学療法士が行うADL訓練は、立つ・座る・歩く・移動する(車椅子)・移乗(ベッドから車椅子へ)などです。

健康的な人から見れば、単純な動作に思えるのですが、サポートするとなると患者さんの状態を見つつ『どうすれば出来るのか?』を考えていかなければなりません。

サポートする理学療法士は、患者さんへの想像力を必要とする訓練なのです。

① 起居動作訓練

ベッドからからだを起こす訓練です。

長い間寝たきりの状態が続いた患者の場合、体を起こしたり立ち上がったりした時に起立性低血圧を起こすこともあるので注意が必要です。

②  移乗動作訓練

移乗とはベッドから車椅子へ、車椅子から便座へ、車椅子から浴槽へと、乗り移る動作の訓練です。

体重を支えるポイントを教えたり、移乗中に転倒しないように安全を確保したりを訓練します。

③ 移動動作訓練(車椅子)

車椅子を使っての移動を訓練します。

ハンドルリムを握って手と足を使ってこぐこと以外にも、患者さんに車椅子の特性を知ってもらいます。

方向転換や段差、溝に注意したりと、理学療法士は訓練と同時に移動中の障害物への対処も指導します。

④ 歩行訓練

歩くことの訓練です。

理学療法士は、転倒防止のために補助につきます。

歩行の前は、バランスをとりながら立ち上がるところから行います。

初めは平行棒を使い、そこから歩行器、松葉杖、ステッキへとステップアップしていきます。

バランスのとり方と歩行に必要な筋肉が身に付けば、補助をなくし、施設内を歩くといった実践的な訓練を行うこともあります。

⑤ 昇降訓練

歩行訓練になれたら、スロープや階段の昇降を訓練していきます。

歩行訓練時と同様に理学療法士は、患者さんの転倒を防ぐために補助に付きます。

⑥ 関節可動域訓練

手・足・首の各関節が硬くならないように、関節の曲げ伸ばしを行う訓練です。

寝たきりの状態が続くと、関節を曲げる時に痛みを感じてしまうようになるので、関節可動域訓練を行います。

⑦ 筋力強化訓練

患者さんの筋力維持と回復のために行います。

理学療法士が、筋肉に抵抗を加えながら行いますが、自分で筋肉を動かすことが困難になった患者さんには、理学療法士が介助しながら行うこともあります。

筋力がある程度備わっている患者さんには、重りをつけて訓練します。